いとうせいこうと国境なき医師団を巡る言葉

いとうせいこうさんとの出会いは、番組「オトナの!」を始める直前の2011年12月29日だった。そう東日本大震災のあったあの年の暮れだ。



翌12年1月から僕は『オトナの!』を独立採算で開始することになります。視聴率にしばられない独立採算の番組を作ること。いままでは視聴率を取るために番組を作ってきました。自分が会いたい人をテレビに出そうなんて、考えたこともなかったです。でも震災が起こって、何かが変わって、僕は自分のやりたい番組を作ろうと思ったのです。手前味噌だけど、僕が見たい天才だけが出演するトーク番組をやってみようと思ったのでした。MCはユースケ・サンタマリアさんにお願いしました。すると彼から一つだけ条件が提示されたのです。

「いとうせいこうさんとなら、一緒にやります」

僕は、それまでせいこうさんとお仕事をご一緒したことはありませんでした。実はせいこうさんのこと、それまでそんなに好きじゃありませんでした。、、、いや、もっと正確に言うと「妬いていた」んだと思います。だって彼は、文学でも音楽でもお笑いでも演劇でもテレビでも、僕の大好きな”完璧な場所”に常にいるのです。会ったこともないのに勝手にすごくうらやましかったんだと思うのです。

でも、実際にお会いしてみてお話ししてみて、一瞬で好きになってしまいました。あまりの頭の良さと人柄に。彼がいろんなカルチャーの完璧な場所にいる理由がわかった気がしました。


こうして4年半番組が続くことになりますが、その間の数々の彼の言葉に、そしてその間の彼の作品に、僕は多大な影響を受け続けることになるのです。

「偶然は、実際に起こったという意味では必然である」

せいこうさんが収録で言った言葉です。

「自分のやりたいことをやるため、僕は自分の理想の世界から、現世界に派遣されたスパイである」

自分の理想の世界を進めるためには、この現実の世界で声高に叫んでいたら、駆逐されてしまう。そのためにはスパイのように、身を隠しながら、それでも理想が叶うように潜伏して活動するのだと。

でも、声高にクレイジーだと思われる言葉を叫んでも許される人ってのが、現世界には少なからず存在している。その人たちは一体なぜ大丈夫なのか? せいこうさんは言いました。

「チャーミングであること」

人はチャーミングであれば、「あいつが言ってんだから、しかたがないか。。。」と大抵のことは多めにみてくれるのです。

せいこうさんは、収録中こうも言っていました。

「自分はいつも違う場所を探して逃げている」

何かある場所で話題になると、人はその場所で次のことやりましょうと言ってくるが、そんなことは気にしないで、さっさと次の場所へ行くのだと。


そんな、いとうせいこうさんが今、「『国境なき医師団』を見にいく」という連載をネットで、それも個人で、勝手にやっています。↓


このルポルタージュ、というかエッセイというか作品?が本当に素晴らしいのです。ジャーナリストでないせいこうさんの書くジャーナリズムというか、せいこうさんでしか書けない言葉とでもいうか、実際の『国境なき医師団』の過酷な状況をハイチやギリシャで彼が取材しながらルポルタージュしている旅行記なのですが、それを読んでいると、いつの間にか僕らはせいこうさんに別の場所へすーっと連れてかれてしまうのです。過酷な状況の解説なのに、それを読んでいる僕らに、なにかしらの癒しが与えられてしまう。そして再び、現実世界の困難さと対峙しなければならないという勇気があふれてくる文章です。


何なのか?これは小説なのか?きっと新しい言葉のジャンルなんじゃないか?

せいこうさんにお会いした時、聞いてみました。

「ふふふ、そうでしょう。ちょっとそんなことをやってみたくてね。」



角田陽一郎/Kakuta Yoichiro Official Site

バラエティプロデューサー/Variety Producer 著書『13の未来地図フレームなき時代の羅針盤』 『「好きなことだけやって生きていく」という提案』『最速で身につく世界史』『成功の神はネガティブな狩人に降臨する-バラエティ的企画術』『究極の人間関係分析学カテゴライズド』/映画「げんげ」監督/ 水道橋博士のメルマ旬報連載中/渋谷のラジオ金曜朝10時[渋谷で角田陽一郎と]/MX オトナに!

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