「なぜならば、あたしにわざわざ教えてもらわなくとも、ほんとうのところ諸君はそれを既に知っておるからだ。」
私は黙っていた。
「あるいは諸君はその絵を描くことによって、諸君は既に承知しておることを、これから主体的に形体化しようとしておるのだ。セロニアス・モンクを見てごらん。セロニアス・モンクはあの不可思議な和音を、理屈や論理で考え出したわけじゃあらない。彼はただしっかり目を見開いて、それを意識の暗闇の中から両手ですくい上げただけなのだ。大事なのは無から何かを創りあげることではあらない。諸君のやるべきはむしろ、今そこにあるものの中から、正しいものを見つけ出すことなのだ」
《『騎士団長殺し 第1部 顕れるイデア編』 22.招待はまだちゃんと生きています》
欧州への旅に持ってきた本は村上春樹の新作『騎士団長殺し』。
第1部だけ持ってきた。(第2部まではきっと読み終わらないだろうし、重いから)
飛行機の中で読み始め、移動中のTGVで読み、時差ぼけで寝付けないベッドの中で読んだ。
上の写真はエクサンプロバンスにて。
数日後、第1部を読み終わった。
”顕れるイデア編”
まさに旅をするような作品だった。そして絵を描くような作品。
まさに旅をしながら、セザンヌ見たり、ダリを見たりしながら、読んだ。
なので、実際の僕の旅なのか? 騎士団長殺しの世界の中なのか? よくわからない時差ぼけのぼーっとした頭で読んだからか、ずーっと夢の中でイデアが顕れていた気持ちだ。
そして第1部は、フランスの最後の場所に置き忘れてしまって、そのまま日本へ。
羽田空港に到着して荷物を受け取って、そのままそこの本屋に行き、第2部を購入。
レジの店員さんは、「これ第2部ですが、よろしいですか?」とわざわざ確認してくれた。
僕の騎士団長殺しは、第2部だけを持ち続けるのだろうな。
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