マイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット監督のアニメ映画『レッドタートル ある島の物語』を観た。
スタジオジブリの作品。短編アニメを作ってきたデュドク監督の長編が観たいとの鈴木敏夫プロデューサーの想いと高畑勲さんのアドバイスが、10年して結実したアニメ。セリフはない。
先日観た『ジブリの大博覧会』で展示を観て、とても楽しみにしていた。
すごく不思議な映画だった。
80分の夢を見ているようだった。
それも産まれてから死ぬまでの夢を。
それは、無人島に流れ着いた男の夢なのか。
赤い亀の見た夢なのか。
そんな議論には意味がないかもだけど、
「ある島」自身が見た夢なのかとも想った。
というか、むしろ僕が、男と亀の夢を見てるんじゃないかとも想った。
なにかの液体に満ちた暗い細い穴を進んで進んで、外に出るって夢を、以前見たことがある。
それって自分の産まれた時の原体験の記憶なのかと、想っている。
そんな夢を見た気分。
そして、何度脱出してもこの島に引き戻される男。僕もそんな夢をよく見る。
きっと普段生きている日常や仕事の記憶なんだと、想っている。
そして、多分死ぬ瞬間に見る夢って、こんな夢なんじゃないかと、想った。
高畑さんがどこまで深く関与しているのかわからないけど、大好きな『かぐや姫の物語』とすごく印象がかさなる。
でも『かぐや姫の物語』を観た時は夢を見たんだとは思わなかった。
多分昔から知っている日本のおとぎ話として、僕が観てしまったからだと想う。
でもこの『レッドタートル』は、なんか”夢”でした。夢を見ているようでした。セリフがないからか、言葉を知る前の、自分の夢というか。
なんか羊水の中にいたときの原体験と共鳴するのだろうか。
夜のシーンのモノトーンの映像が、すごく印象に残る。「ある島」は多分亜熱帯の島なのだろうか?でもそこに南洋の陽光の明るさはほとんどない。ほとんど空は白く霞んでいて、雨が激しく降る。
最近の東京みたいだ。
僕が今いる世界と、実はこの「ある島」はすごく重なっているのかもしれない。
そこに亀の甲羅の赤色がハッキリと脳裏に焼きつく。
「どこから来たのか どこへ行くのか いのちは?」
僕もいつか、レッドタートルの夢を見てしまいそうだ。
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