自由を“運用”すること

今日のキングコング西野さんのブログ。↓
この西野さんの話、相変わらずキレキレなのですが(いろんな意味で)、、、読むとむしろなんかSNSを通して意見を言ってくる人の方が、大部分の問題を見て見ぬ振りのサイレントマジョリティより、いいのではないか?となんか思ってしまった。その議論が稚拙であっても。

意見がある人には反論だったり賛成だったり応援したりできるけど、何も無いと何もできないから。

現実の社会や組織や会社って「意見を言う自由がある」と標榜してる割には、いざ意見を言うと周りに煙たがられる。集団の無言の圧力というか。
で、その周りとの調整に終始して意見を言わない(言えない)人が多いと思う、現実世界では。
それがSNS世界の中で匿名性をまとうと、すると途端に鬱憤晴らし的な口撃をする側になったりする。それって、長いこと企業というそういう集団にいたので、なーんか気持ちはわかる。(というか、それが嫌で会社辞めたとも言えるわけで)

つまり、意見を言うのはいいんだけど、その意見が鬱憤晴らしだったり羨望だったり嫉妬だったり、枝葉末節への揚げ足取りだったりの粉飾が入ってくると、議論の中身が澱んでしまって、なんか無意味に思えてしまう。

で、それって匿名性の中だけでなく、むしろ名前を出してる方だったり有名人であったりもする。

例えば、閉館してしまった青山円形劇場の存続を求める話。
僕も何回も観に行った大好きな劇場。存続して欲しいし、復活して欲しい!

でも先日こんなTweetを見たのだ。
『回る劇場より、青山劇場を返してほしい。回らなくていいから、円形劇場を復活させてほしい。』

これ見て何か悲しくなったのだ。
だって僕は青山円形劇場がぜひ復活して欲しいし、回る劇場もすごく楽しみだ。
何かの存続を求めることが新しさを否定することと、セットになってしまう言説がなんか悲しい。

ちなみに、この回る劇場とは、豊洲に先月できた「ステージアラウンド東京」のことを言ってるのだと推測されるけど、これは僕の元いた会社がやっている。この事業を進めようと計画段階の時、僕の芝居好きの先輩は欧州まで言って視察して来たんだって。その先輩曰く「素晴らしかった」と。
それ、聞いて僕は、これ日本にできるのって「楽しいな」って思ったのだ。まだ行ってないけど、ぜひ行ってみたい。
なので、芝居好きの一人として、そんな頑張ってる元仲間を知ってるだけに、なんか件のTweet、すごく悲しいんだよね。多分それを呟いた方も芝居好きだと思うから。
(百歩譲って、TBSが青山円形劇場を潰したのなら、言われる謂れはあるけど)

時々「このプロジェクトやめろ!」「この催しいらない!」「もっと大事だことがある」的な発言ってあるけど、僕は色んなプロジェクトや催しが(時に無駄でも)あってもいいと思う。
もしやめろと言ってるその人自身が関わる案件が、知らない人に「いらない!」って言われたら悲しくないだろうか。

表現の自由は絶対的に守られるべき。
だからむしろ、何を言ってもいいというわけではないと思う。
絶対的な表現の自由があるからこそ、絶対言っちゃいけないこともある。

【自由を運用する】

つまりそこを慮ることを一人一人がすることが、一人一人の自由を守ることだと思う。

(この↑劇場のTweet例は、そんな激しいことでもない些細な言葉かもしれないけど、例に出してみました。)

僕が思うのは、民族だったり宗教だったりのそれぞれのタブーを、どんな理由であれ他者が侮蔑したりすることは、認められないことだと思うから。フランスでの表現の自由は、絶対的正義で、テロを起こしたイスラム原理主義者は許されないけど、だからと言ってムハンマドを侮蔑するような言い方をすることは許されないことだと思う。それってバーミヤン遺跡を潰したタリバーンやパルミラ遺跡を壊したISと、結局一緒だ。

日本で言えば、社会や組織や会社の中で、匿名性をまとわなくても、自分の意見を言える本当の意味の自由を、皆でそれぞれ一人一人が“運用”するしかないと思う。
自由は上から与えられたり許可をもらうのではない。自由とは自然な“状態”でもない(漢字の字面はもともとそうだったかもしれないが)。

一人一人が“自由を運用”しなければ、やがて自由じゃなくなる。

それを一人一人が気にしていないと、やがて自由も運用できなくなる。

そんな気配が、今の日本や世界で感じられるから。









角田陽一郎 Kakuta Yoichiro Official Site [DIVERSE]

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バラエティプロデューサー/文化資源学研究者(東大D2)/ 著書:小説『AP』『仕事人生あんちょこ辞典』『最速で身につく世界史/日本史』『天才になる方法』『読書をプロデュース』『人生が変わるすごい地理』『出世のススメ』『運の技術』『究極の人間関係分析学カテゴライズド』他/映画「げんげ」監督/水道橋博士のメルマ旬報/週プレ連載中/メルマガDIVERSE

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