六ヶ所原燃PRセンターを訪ねて(青森の旅3)

下北半島の付け根、六ヶ所村にある六ヶ所原燃PRセンターに行った。

尊敬するミュージシャンASIAN KUNG-FU GENERATIONのゴッチが震災前の2010年に行っている。そのブログを以前読んで、僕もいつか訪れたいと思っていたのだ。↓



六ヶ所村は、遠い、寒い、僻地だ。多分だからここにこの施設はあるのだろう。

ここには、主に3施設がる。

「ウラン濃縮工場」と

「高レベル放射性廃棄物貯蔵管理センター」と

「低レベル放射性廃棄物埋設センター」

そして、ゆくゆくは「再処理工場」と「MOX燃料工場」を操業開始すれば、

『原子燃料サイクル事業」が運用できるらしいのだ。

まずはここがポイントだ、原子燃料”リサイクル”=再循環じゃなくて、”サイクル”=循環。つまりサイクルにはなっているけど、リサイクルじゃないのだ。そんなことも知らなかった。

つまり、サイクルの中で、後からいろいろ足すし、いろいろいらないものが出てくる。それら低レベル&高レベルの放射生廃棄物を処理する行為も、原子燃料サイクルの重要な行為なのだ。

他にも、

原爆と原発の違い、とか

原発事故でよく出てきた、燃料棒、とか

プルサーマルとか、MOX燃料とか

なんで水の入ったプールにいれるのか、とか

いろいろ原子力について、知らないことを、学べた。

反対するでも、賛成するでも、まずは知らなければいけない。


よい施設だった。原燃PRセンター(無料)。1991年にオープンしたとある。今年で25周年だ。PRし続けて四半世紀。

僕が、この施設を訪れて、一番気付かされたことは、原子燃料サイクル事業を推進したいという関係者の気持ちは、実はもともとはピュアなんじゃないだろうか?ってことだ。

今までは、「原発が必要だ」的論調を聞くと、だいたいは経済効率だとか、地元の利権だとか、企業の利益だとか、官僚的な論理だとか、なんかゼニカネ的な気分にさせられた。

だから、僕は原発に反対なのだと感じていた。それは、

「ゼニカネより、生命が大事にきまっているだろうが!」

という、この一点の命題の方が真理だと思えてならないからだ。

このゼニカネ的論調を言われると、なんて下品な痴性的な考えで原発を推進しているのだろう?と思えてならなかった。

でも、いろいろ展示を見ていると、

資源のない国、日本が、このあと未来を生きて行くとき、資源をサイクルしようと、それも科学の技術を使って、やっていこう、と考えるのは極めて知的な、むしろ上品なしなやかな考え方からでてきた発想なんだって、すごく思えた。

多分戦後、奇跡的な経済復興を遂げた日本人たちは、次の発展のためには、この原子燃料サイクルを推進することが、むしろ地球のためにも必要不可欠だって思ったんだと思う。

そして、その作業は極めて優秀な科学と精密な技術が必要だけれど、それこそ、その困難さを追求できるのは、われわれ日本人なんだって、そんな静かな科学者と技術者のプライドがすごく感じられた。

例えば、かつても今もフランスは原発に比較的前向きだ。

それは、すごくフランス人の気質が感じられる。ゼニカネというより、自分たちの知性を(むしろ過剰に絶対的に)信じているというか。

「われわれは、原子力を、われわれの科学と技術でコントロールできるのです」

というフランス人の自負とプライドを感じる。

そして、日本も、日本人の、自分たちのプライドを強く持っているのだ。科学技術に秀でているという日本人のプライド、(それも上品な)知的なプライドを。

つまり原子力を推進するという行為は、痴性ではなく知性からきているのだ。

それを僕は初めて知った。


《原燃PRセンターの前の遊具施設》



そして、それを知った上で、やっぱりこう思った。

原子力を使うことは、やっぱり止めるべき、だと。

それは、経済の発展を進めるためには原子力が必要だというパラダイム自体が、未来にむけて転換していくからだと思うから。原子力事業は何十年、何百年レベルで考える事業だから、急な転換は難しいのだろうけど、いまや時代は何年レベルというスピード感で転換していくのだから。僕らの考え方もその時代の速さで捉え直し続ける必要があるからだ。その捉え直す契機が不幸にも5年前にあったのだし。

そして、5年前にあれだけの悲惨な事故を目の当たりにして、日本人は、自分たちのプライドを再転換することこそが、本当の知性なんだって気づくことを、僕は信じているからでもある。

何度失敗してもそのたび這い上がる、考え方をしなやかに修正して再転換できる知性をもっている国民だと、僕は信じているから。


六ヶ所村には、風力発電の大風車がたくさん建っている。

太陽光パネルもたくさん設置されている。

そして、原油の備蓄基地もある。ここだけで日本の1週間分の原油が備蓄されているのだ。


原燃施設からの帰り道、それらが一堂に見えた。

六ヶ所村は、遠いし、寒いし、僻地だ。でも日本の知性がいっぱいつまった未来を一番考えている場所でもあるのだ。

角田陽一郎 Kakuta Yoichiro Official Site [DIVERSE]

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バラエティプロデューサー/文化資源学研究者(東大D2)/ 著書:小説『AP』『仕事人生あんちょこ辞典』『最速で身につく世界史/日本史』『天才になる方法』『読書をプロデュース』『人生が変わるすごい地理』『出世のススメ』『運の技術』『究極の人間関係分析学カテゴライズド』他/映画「げんげ」監督/水道橋博士のメルマ旬報/週プレ連載中/メルマガDIVERSE

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