「柏原えつとむ展」豊津徳44【HozuTalk】

柏原えつとむ展


東京画廊の山本豊津とバラエティプロデューサーのカクタ教授がアートを巡る知のライブトーク!

柏原えつとむは1941年兵庫県神戸市生まれ、多摩美術大学絵画科を 1965年に卒業しました。斎藤義重ゼミに学び、1968年の中原佑介と石子順造が企画した「トリックス・アンド・ヴィジョン(盗まれた眼)」展(東京画廊・村松画廊、東京)や1973年の「サンパウロ・ビエンナーレ」に参加しました。代表的な作品に、遠近法の問題を扱った《Silencer》シリーズ(1967-68 年)、小泉博夫・前川欣三と協働した《Mr.Xとは何か?》(1968-69 年)、そしてマリリン・モンローの肖像をモチーフとした《方法のモンロー》(1973 年)などがあります。

柏原の活動は展覧会評や絵本制作など、多岐にわたっており、主な個展に「〈私〉の解体へ柏原えつとむの場合」(国立国際美術館、2012年)などがあります。作品は京都国立近代美術館、東京都現代美術館、国立国際美術館、高松市美術館に収蔵されています。 柏原は大学在学初期から遠近法に関心を持ち、“逆遠近”と呼ぶ具象的傾向の作品を制作しました (1961-62年)。それらの作品において、柏原は西洋的な遠近法ではなく、日本画や東洋画の平行遠近法や上下遠近法を取り入れ、絵画特有の奥行きを模索しています。その後、モチーフを箱に限定して遠近法というテーマを掘り下げ、《Silent Box》や《To Horizon》シリーズ(1963-65年)へと発展させました。さらに、1968 年の《Silencer》シリーズは、遠近法を用いて平面の画面を立体的に見せる効果によって、視覚的認識のあり方を問い直しています。《Silencer》シリーズが展示された「トリックス・ アンド・ヴィジョン(盗まれた眼)」展は、「見ること」とそれに含まれる錯視性への関心という時代潮流を象徴する出来事でした。

角田陽一郎 Kakuta Yoichiro Official Site [DIVERSE]

バラエティプロデューサー/文化資源学研究者(東大D2)/ 著書:小説『AP』『仕事人生あんちょこ辞典』『最速で身につく世界史/日本史』『天才になる方法』『読書をプロデュース』『人生が変わるすごい地理』『出世のススメ』『運の技術』『究極の人間関係分析学カテゴライズド』他/映画「げんげ」監督/水道橋博士のメルマ旬報/週プレ連載中/メルマガDIVERSE

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