『ドストエフスキーとの59の旅』by亀山郁夫

亀山郁夫さんの『ドストエフスキーとの59の旅』最高だった。
全体に通底する感傷的に生きることへの氏の肯定感が心地よい。あまりに素晴らしくて一気に読んでしまった。ドストエフスキーとまだ出会えてない自分の人生の過去への若干の後悔と、これから出会えるという未来へのワクワクする期待感。

生きた人間の存在が、ケシ粒のように空しく感じられる空間。逆に、この空間としのぎを削って生きる小説の主人公たちの大きさ。実在の人間は名もなく死に、架空の人々の記憶は、人類の知のタンクに収められて綿々と生き続けていくという、このふしぎな矛盾。p.217

一人の人間が他の人の死を願望し、人の苦しみを黙過し、人の死を運命に向かって唆す。それが人間が人間であることの、ある意味では根源的といってもよい条件の一つなのだ。そのように考えることは、わたしの恥部であり、恥部は隠さなくてはならなかった。そして幸い、ドストエフスキーがわたしの身代わりを務めるかのように、その「根源的」な恥部をさらけだしてくれた。

角田陽一郎 Kakuta Yoichiro Official Site [DIVERSE]

バラエティプロデューサー/文化資源学研究者(東大D2)/ 著書:小説『AP』『仕事人生あんちょこ辞典』『最速で身につく世界史/日本史』『天才になる方法』『読書をプロデュース』『人生が変わるすごい地理』『出世のススメ』『運の技術』『究極の人間関係分析学カテゴライズド』他/映画「げんげ」監督/水道橋博士のメルマ旬報/週プレ連載中/メルマガDIVERSE

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